あの後、やっぱり心配だと戻って来てくださった白石部長に・・・。
「どうせ、付き合うとかそういう話にはなっとらんやろ?」
などと言われ。
「そんなん、どーだってええやん!ワイはが好きって言うてくれたっちゅうことだけで、充分嬉しいんや!」
という、相変わらず恥ずかしくなるようなことを遠山くんが言い返すけれど。
「金ちゃん、よう考えてみ。に好意を抱いてんのは、何も金ちゃんだけやないってことや。そんなことは、の良さをわかっとる金ちゃんには、簡単に想像できるやろ?」
「うん。」
と、またしても私が照れそうになるぐらい、遠山くんが一切の迷いも無く力強く頷き、気が付けば、完全に話の主導権は白石部長が握っていた。
・・・まぁ、白石部長と遠山くんじゃあ、仕方がないと言えば、そうなのかもしれない。ただ、2人に言いたいのは・・・・・・。
私のことを忘れてませんか・・・?!
「そやから、ちゃんと付き合って欲しい、て言うとかなアカン。・・・それに、かて言うて欲しいやろ?」
・・・・・・だからって、こんなときに振らないで欲しい・・・。
そんな風に、私が返事をし兼ねていると、先に遠山くんが言った。
「!ワイと付き合うて欲しい!」
「・・・・・・・・・うん、わかった。」
「よっしゃー!!!ほな、これから、よろしゅうな!」
・・・そういうわけで、私たちは付き合うことになってしまった。
別に今更嫌だとか思っているわけじゃない。ただ、私は遠山くんに対する気持ちが恋愛感情なのかも、って気付けたのが、ついさっきのことだったから・・・。そんな気持ちで、付き合ってもいいのかなって思ったんだ。
それに、付き合った後も大して私たちの関係は変わらず・・・。こんなことで、付き合っていると言っていいものなのか。遠山くんにラッピング付きでカップケーキを渡していた、私のクラスの子たちに申し訳ない気がする・・・。
だからって、何をすればいいのかもわからない。・・・何だろう。デート、とか??うーん・・・そういう雰囲気じゃないよね、遠山くんって。
・・・と言うか、こんなことを考えながら、本当は私が満足してないだけなんじゃないだろうか。私がもっと遠山くんと付き合っているってことを実感したいだけなのかもしれない。
相変わらず、素直じゃないと言うか、鈍いと言うか・・・。なんて溜め息を吐いていれば、また白石部長に何か言われそう・・・・・・などと思っていると。
「ちゃん、どないしたん?溜め息なんか吐いちゃって・・・。」
「こ、こんじ・・・。」
「こ、は、る。」
「・・・で、でも、先輩を名前で呼ぶのは失礼かと・・・・・・。」
「ええから。せ〜の?」
「・・・・・・小春先輩。」
「はい、ようできました!」
今回は、こんじ・・・・・・じゃなかった、小春先輩に声をかけていただいた。
小春先輩って、こう妙な迫力があるんだよね・・・(心の中で呼び間違えても、怒られそうな・・・)。
そんな先輩がずいっと私の目の前に寄って来て、笑顔で問いかけた。・・・当然ながら、それに答えないでいようとも思えるわけがなかった。
「それで?どないしたん?恋の悩み??」
「え〜っと・・・。たぶん、そうなんだと思います。」
「自分でわからへんの・・・?」
「そうですねー・・・。と言うか、これを恋と呼んでいいのかを悩んでいる、といった感じなんです・・・。」
「まぁ、可愛い!そやけど、恋愛関係ってことは・・・。金太郎さんのことやろう?2人は付き合ってるんやし、恋なんとちゃうの?」
「やっぱり、そうなんでしょうか・・・?」
「どういうこと??」
私はさっきまで考えていたことを小春先輩に話した。少し恥ずかしいし、変な悩みだとは思ったけど、小春先輩はちゃんと真剣に聞いてくださった。私にしては、それだけで充分嬉しい。
「なるほどな・・・。でも、それはやっぱり、金太郎さんの所為でもあると思うで?」
「そうですかねー・・・。私としては、やっぱり自分がワガママを言っているような気がして・・・・・・。」
「そんなことあらへんよ!それぐらい思うんは、恋する乙女やったら当然のことやで!そやから、この小春先輩に任せときー!」
「は、はぁ・・・。」
何をしていただけるのか。少し不安もあるけれど・・・。やっぱり、言い返すことはできなくて、私は曖昧な返事しかできなかった。
「ほな、行くで!」
「えっ?!」
そんな私の腕を突然掴むと、小春先輩は少し急ぎ気味で歩き出された。私は慌てるも、先輩について行くしかなかった。・・・・・・やっぱり、言い返せないからね・・・。
しばらくして、小春が立ち止まり、ようやく私の腕を離して下さった。
「ちょっと、ここで待っといてな?」
「え〜っと・・・一体何を・・・・・・??」
「ええから、ええから。ここに隠れとくんやで?」
「はい・・・・・・。」
まだよくわからないまま、私は木の陰へと隠れることになった。・・・・・・本当に、何をされるんだろうか。
そう思っていると・・・・・・。
「あ!金太郎さん!!」
「ん?何ー?どないしたん??」
そこに、たまたま遠山くんが現れた。・・・・・・いや、小春先輩のことだから、偶然ではなかったんだろうけど。
「金太郎さん、どっか行きたいトコある??」
「行きたいトコ??・・・・・・もしかして、みんなでどっか行くん?!そやったら、たこ焼き食べに行きたいー!!」
「ちゃうちゃう。みんな、やなくて、ちゃんと、やんか。」
「と〜?・・・・・・う〜ん。別にどこも。」
・・・・・・ヤバイ。ちょっと・・・・・・いや、本当はかなり凹んだ。そう感じるってことは、やっぱり、私って遠山くんのことが好きなんだよね・・・・・・。
どうして、こういうときにしか気付けないんだろう。そんなときに気付いたって、つらいだけなのに・・・・・・。まぁ、私が素直じゃないから、自業自得ね。
そう思いながら、とりあえずは、小春先輩が戻って来られるまでは待とうと決意した。・・・・・・泣くのは、我慢して。
「そんなことあらへんやろ?デートに行きたいとは思わへんの??」
「う〜ん・・・・・・。だって、デートって何すればええん?」
「何って・・・それは、人にも依ると思うけど・・・・・・。」
「そやろ?そやったら、ワイは別にとどっかに行ったりせんでええ。そんなんせんでも、と一緒に居れたら、それでええんや。」
「・・・ということらしいで、ちゃん。」
小春先輩にそう言われ、戸惑いながらも私は2人の前へ出た。私の姿を見て、遠山くんが少し驚いていたけど、そんなことにはお構いなしに、小春先輩が話を続けられた。
「今の金太郎さんの言葉を聞いて、ちゃんはどう思ったん?」
「・・・・・・最初はショックでしたけど・・・後の言葉を聞いて、素直に嬉しいって思いました。」
「それで、金太郎さんのことをどう想ってるか、わかったんやない??」
「・・・・・・そう、ですね。わかったと思います。」
「なぁなぁ、2人して何の話しとるん??」
「それは、ちゃんから聞いて!ほな、アタシはこれで・・・・・・。」
語尾にハートマークでも付きそうな、妖しげな笑みを浮かべ、小春先輩はこの場から離れられた。
白石部長といい、小春先輩といい、どうしてこう、急に2人きりにさせるかなぁ・・・・・・と少しぼやきそうになるけど、御二方とも私のことを思って、やってくださっているのだ。ちゃんと素直になろうと、私は目の前の遠山くんと目を合わした。
「何の話やったん、?」
「・・・・・・私も、どこかへ行かなくても、遠山くんと一緒に居れたら嬉しい、って話かな。」
「ホンマにー?!めっちゃ嬉しい!!」
「うん・・・でも・・・。たまには、どこかに行きたいかな、って話でもあるかも。」
「そうなん??・・・わかった!ほな、どっか行こう!はどこに行きたい??」
「・・・どこでもいいんだけど・・・・・・。」
「じゃあ、今日の帰り、たこ焼き食べに行かへん?さっき話してたら、食べたなってしもたー・・・。」
「・・・わかった。ありがとう。」
「何言うてんねん!ワイの方こそ、おーきに!!ワイ、ホンマにのこと、大好きやー!」
そう言って、遠山くんは私に思い切り抱きついた。恥ずかしいけど・・・・・・私も勇気を出して、腕を回した。
「私だって・・・・・・大好き。」
私としては、すごく頑張って、すごく素直に言ったと思う。だから、これでめでたし、めでたし、で終わりたかったんだけど・・・・・・。
「そんなら、ワイはもっとも〜っと好きや!」
「え、えぇっ・・・?!じゃ、じゃあ、私だって・・・・・・!」
「アカン!ワイの方がのこと好きなんやからな!!」
「な、なんでよ〜・・・!!」
いつもは素直じゃないくせに、今度はうっかり対抗心を燃やしそうになっちゃって、相変わらず面倒な女だけど・・・・・・。こんな奴でよければ、これからもよろしく、遠山くん。
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久々の遠山夢!やっぱり、書いてて楽しかったです。本当、いい子ですねぇ(笑)。それに比べて、この話のヒロインは素直じゃないので、苦労させられました・・・(←自分で考えたんだろ)。
ちなみに、これは40.5巻の「行きたいデートスポット」に対する、金ちゃんの答えを見て書こうと思ったものです。彼は「デートって何すればええん?」と答えていたので、たぶん、こういうことなんじゃないかなぁーと・・・。
きっと、遠山くんは恋愛上手ってわけじゃないけど、自分の気持ちは素直に言えて、彼女のことをすごく大事にしそうだと思います(←これが所謂、二次創作!/笑)。
('10/02/18)